Windows 8の発売を2日後に控え、PC業界も段々とざわついてきました。新OS、こと新Windowsの発売前には常にそれらしい"空気"というものがありましたが、今回は久しぶりにインターフェイスが刷新されるということで、特に注目度が高いように思えます。筆者も例に漏れず新OSの発売を非常に楽しみにしています。
 言うまでもなく、関心を集めているのはタッチ操作に最適化されたModernUIです。Windowsにとって、そしてPC全体にとっても新しい試みだからです。そして、いつもならRMTがリリースされた時点でそのOSに対する評価は殆ど決まっているものですが、今回ばかりは各方面とも慎重な意見が多いように思います。かつてVistaを「重い」の一言で片づけた人たちも、ModernUIの評価は難しいようです。
 ちなみに、筆者にとっては、近年のWindowsで発売日前にRMTを試さなかったのは今回が初めてだったりします。なので現時点では印象もなにも無いのですが、予想としてはModernUIになってもそこはWindows、デスクトップモードがある以上さして実用性は変わらないんじゃないかと思っています。Yogaが届いたらいろいろ試すことが多そうです。

 さて、本来であれば触ったことのないOSについてあれこれ言っても仕方がないのですが、今回はメディアではあまり大きく扱われない新機能の一つ、記憶域プールについて触れたいと思います。前述の通りUIの変更にばかり注目が集まるWindows 8ですが、実はいろいろと中身が進化していて、中でも一部ユーザーには非常に”刺さる”であろう新機能が記憶域プールです。個人的には、これだけでWindows 8の購入が約束されていると言っても過言ではないくらいの目玉機能でもあります。
 なお、なかなかにマニアックな機能なので今回は詳細な説明はしていません。いずれまた詳しく説明する機会を設けたいとは思いますが、今回は概要だけをざっくりとなぞっています。

 中身に移る前に単語の話から始めたいと思います。この機能、英語では「Storage Space」という表現が用いられていますが、「記憶域プール」や「記憶域」と訳されているようです。Microsoftはブログで後者を使っているのですが、強調無しで文章に紛れ込んだときにわかりづらいため、誰かが前者を考え出したのでしょう。個人的にはそのまま「ストレージスペース」がベストだと思うのですが、芸がないということでしょうか。とりあえず、本稿では記憶域プールという表現を用いていきます。
 その内容ですが、ざっくり言うと仮想化ストレージです。今までもいくつかWindowsで使える仮想化ストレージソリューションはありましたが、記憶域プールはそれらとは一線を画す、非常にリッチな機能に仕上がっています。具体的には、代表的な仮想化ストレージであるZFSに近い使い勝手となります。
 仕組みとしては、物理ディスクで構築されたストレージプール上にスペースと呼ばれる論理ディスクを作成して運用します。これだけ聞くとZFSと同じですが、もちろん違いもあります。

1. Windows 8で使える
 当たり前とはいえ、最大の特徴は何と言ってもこれでしょう。ZFSはMacOSや一部Linuxでもサポートされていますが、その殆どはSolarisで運用されているかと思います。個人的にSolarisは大好きで、とても優秀なOSだとは思うのですが、ハードウェアサポートはかなり限定的と言わざるを得ません。優秀なZFS、しかしそれを動かすためのハードウェアを揃えるのはひと手間かかるものです。
 しかし、Windows 8ならそんな心配はいりません。豊富なハードウェア資源が既にあり、今後も増え続けていくでしょう。NICのドライバ探しに苦労することは無いのです。また、Windows ServerだけではなくWindows 8にも搭載されている点は大きく評価したいところです。これにより多くの人が安く、手軽に試せるものとなりました。

2. 冗長化へのアプローチ
 大容量ストレージを扱う上で最も大切なことは冗長化ですが、もちろん記憶域プールでも可能です。ただし、設計がZFSとは大きく異なります。
 ZFSではストレージプールを冗長化するアプローチがとられています。物理ディスクをプールに追加する際にミラーリングやストライピングを設定して組み込みます。これによってRAID-ZとRAID-Z2という魅力的なオプションが使用可能となりますが、プールを拡張する際には同じ冗長度のディスク群を追加する必要があります。例えばRAID-Z2で構築されているプールにRAID-Zでディスクを追加してしまうと、全体の信頼性はRAID-Z相当に落ちてしまいます。同じ信頼性を保つにはRAID-Z2か3-wayミラーが要求されるので最低でも3台同時に物理ディスクを足す必要が出てきます。
 これに対して、記憶域プールではスペースを冗長化しています。スペース毎に2-wayミラー、3-wayミラー、パリティ、あるいは冗長化無しを選択できます。これによって、同じプールから信頼性の異なるスペースを切りだせるわけです。RAID-Z2の様な2台パリティの構成は選べませんが、代わりに拡張は手軽にできます。スペースがどのオプションを使っていようとも、プールの空き容量が少なくなってきたらディスクを足せばあとはシステムが自動的にうまく使ってくれます。おそらくRAID-Zに比べるとこちらのパリティの容量効率は低いと思いますが、個人利用での小規模なシステムでは手軽な拡張性の方がより魅力的です。

3. リムーバブルドライブはNG
 この記憶域プール、仮想化ストレージらしく物理ディスクの接続方式を殆ど問わない仕様になっていますが、リムーバブルドライブだけは使用できません。つまりUSBメモリはダメということです。ZFSではUSBメモリも使えるので複数本刺して遊べるのですが、記憶域プールでは不可能です。
 大容量ストレージという観点から見れば、USBメモリを使えないことは別段大きな問題にはならないと思います。ただ、手軽さはやはり失われてしまいます。ハブに32GBのUSBメモリを6本差して簡易冗長化ストレージにする、なんていかにも楽しそうですが残念ながらできません。

4. キャッシュドライブは使えない
 ZFSではプールにキャッシュドライブを割り当てることができます。特に大規模なRAID-Zになるとパリティ生成によるパフォーマンスの低下が深刻となりますが、キャッシュとして高速なSSDを用いるなどしてこれを改善することが可能です。しかし、記憶域プールではこれはできません。読み込みはともかく、書き込みはキャッシュありZFSと比べると不利になりそうです。将来的に拡張されることに期待です。

5. ブート不可
 残念ながらOSも含めての冗長化はできません。ただ、ZFSも初めブート不可だったのが後に可能となったので、こちらも今後の拡張に期待です。

6. ブロックレベルチェックサムは無い?
 ZFSの信頼性を確かなものとしている機能の一つがブロックレベルでのエラー訂正です。ざっとネット上の記事を読んだ限りでは記憶域プールにこの機能はありません。なので記憶域プール単体での信頼性はZFSに劣るかと思われます。ただし、Windowsでは次のReFSが控えているので将来的には遜色ない信頼性が得られるでしょう。

 以上、気になるポイントだけ並べてみました。まだ新しい技術なのでいくつか不便な点もありますが、総じて使い勝手は良さそうだなというのが印象です。同時に、今後の拡張が楽しみでもあります。
 これまではストレージというとZFSが群を抜いて使いやすく、他に安価な選択肢がない状況でしたが、Windows 8の登場によって誰でも手軽に高可用性ストレージが運用できるようになるのかと思うと、感慨深いものがありますね。
Tags: windows8 記憶域プール
10.- 2013.03.01 04:56
RTM?
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