モニタキャリブレーションの目的は表示を改善して生産性を上げることにあります。正しく校正されたモニタは野良に比べて圧倒的に見やすいでしょう。そして、ちゃんと調整できるようになると今度はモニタの性能限界が気になってきます。
 そうして新しいモニタが欲しくなった時に、知っていると便利かもしれないことをまとめてみたいと思います。

信じてはいけないレビューサイト
 今さら言うまでもないことかもしれませんが、レビューサイトに書いてあることはあてになりません。製品を買ってから読むとまともなことを書いている人も結構いるなとは思いますが、買う前だと混乱するだけです。確実なのはカタログスペックです。

輝度/コントラスト
 輝度は標準なのか最大なのか気を付けましょう。もっとも、よほど遠くから見る用途でない限り、暗すぎて困るということはないでしょう。プロユースの場合は逆にどこまで暗くできるか問題になる場合がありますが、普通は気にしません。
 コントラストで黒輝度を計算します。その黒輝度ですが、0.5以下であれば普通、0.3以下なら優秀です。ただ、白輝度との兼ね合いで実測値が変わる上に、コントラストの数字が結構適当なので参考程度に考えるのが無難でしょう。黒にこだわる場合はVAパネルを選んでください。

応答速度
 数値が白黒(WtB)なのか中間色(GtG)なのか気を付けましょう。白黒はオーバードライブでいくらでも早くできますが、中間色はパネルの素の性能が大事になります。ただ、経験上応答速度も意外と数字が当てになりません。店頭で見ることをお勧めします。なお、こだわりたい場合は120Hz駆動のTNパネルを選んでください。

視野角
 パネル方式がかなり支配的です。IPS>VA>TNの図式は常に成立すると考えましょう。実用上気になるのは視野角よりも斜めから見た時の色変化の方で、数字は大差ないのにIPSの方が圧倒的にTNより見やすいというのはここから来ています。IPSパネルなら気にしなくても構いませんが、VAやTN採用の製品は店頭で確かめておくのが無難です。
 なお、一般的な見やすさを最も左右するのが視野角です。特別なこだわりがないのであればIPSパネルをお勧めします。

色域
 カタログスペックに乗ることは少ないですが、確認は簡単です。メーカーサイトからプロファイルを入手して下さい。ある程度参考にはなります。

バックライト
 CCFLかLEDか、世間的にはどうやらLEDの方が優秀という認識が広まっているようですが、それぞれに得手不得手があります。
 どんどん採用が減るCCFLですが、その気になれば圧倒的にLEDより明るくできます。また、白色LEDよりも色域が広いです。その一方で、温度が安定するまでは出力も安定しないのでモニタの電源を付けて10分ぐらい待たないと本来の表示になりません。当然発熱や消費電力も大きいです。
 対して、白色LEDは低発熱低消費電力が大きな特徴です。弱点の明るさもモニタとして使う分には問題になりません。色域は製品にもよりますが、sRGBであれば完全にカバーするものも出てきました。また、立ち上がりが非常に早く、1分もしないうちに本来の表示となります。
 全体としてはやはり白色LEDの方が便利でしょうか。sRGBで使えば色域も問題になりません。

表面仕上げ
 最終的な見た目です。光沢にするのか非光沢にするのか、ギラギラ具合やツブツブ具合はどうなのか、輝度ムラが気になるかどうか、どれも実物を見ないと判断できない部分です。また、人によって大きく好みが分かれる部分でもあります。店頭で見ることをお勧めします。

品質
 買ってみるまでわからない、けれども非常に大切なのが品質です。例えば、以前筆者が買ったLGのモニタはそれはもう低品質でした。
 多くの製品はRGBゲインを個別に設定して白色点を調整できる機能を持っているかと思いますが、安価な製品では注意してください。筆者のそのモニタは100段階調整でデフォルトが100でした。測色計で見たら青が一番弱かったのでまずは赤を下げてみたら、下げても下げても白色点が変わらない。何事かというと発色が振り切れていて値を下げても輝度が下がるだけで肝心の"赤さ"が変わらないのです。
 最終的にどうなったかというと、R:23 G:26: B:18 で白色点6500Kになりました。青が一番弱かったわけですが、18から上は振り切れていることがわかりました。それでも白色点が合ったからめでたしとなればいいのですが、これだけでは終わりません。
 ゲインを下げたことのとばっちりは輝度が受けることになります。デフォルトの1/4まで絞れば当然画面はかなり暗くなります。モニタの明るさを最大にしても90cdにしかなりません。コントラストはというと、上げるとすぐ白飛びするので上げられません。
 というわけで、輝度300cdのモニタを買ってきたら実は最大90cdだったというお話でした。しばらくLGのモニタは買わないと思います。それはともかく、メーカーや価格を問わず品質の低い製品は確かに存在するものです。
Tags: モニタ
 色合わせに関してはたぶんこれが最終回です。最後はついつい忘れがちなレンダリングインテントの話です。
 カラーマネジメントでは入力と出力の色域が異なる場合、正しい表示になるようにソースの色を変換するわけですが、この時の変換方式がレンダリングインテントです。4つのインテントが存在し、状況に応じて使い分けることになります。

Peceptual(知覚的)
 ソースの色域がモニタの色域よりも広い場合に明度、つまりは明るさを保ちながらソースの色を圧縮する方式です。当然もとよりも狭い色域に押し込められるので彩度は犠牲になりますが、諧調性の破たんが起こりにくいという利点を持っています。
 写真など綺麗なグラデーションが求められる場合で有効です。主に印刷物とのマッチング目的で用いられるのでディスプレイだけの色合わせではあまり使われません。

Satulation(彩度)
 ソースの色域がモニタの色域よりも広い場合に今度は彩度、つまりは鮮やかさを保ちながらソースの色を圧縮する方式です。こちらでは明度が犠牲になりますが、鮮やかな仕上がりとなります。
 図や表といった見やすさが求められる場面で有効です。こちらもやはり印刷物とのマッチング目的で用いられるのでディスプレイだけの色合わせではあまり使われません。

Relative Colorimetric(相対的)
 まずソースとモニタの白色点が違う場合に、ソースの白色点がモニタに合うように調整されます。その上で、ソースの色域がモニタの色域よりも広い場合には色域外の色がカットされ、最も近い色に置き換わります。明度も彩度も犠牲となりますが、色域内の正確性は保証されます。
 直感的でわかりやすい方式で、正確な色を見るには最も有効です。通常はこの方式を使います。

Absolute Colorimetric(絶対的)
 相対的とあまり変わらないのですが、白色点の変換を行いません。そのため白も着色されます。最も正確そうに思える方式ですが、実は最も使用頻度が低いです。モニタ上で印刷物をエミュレートするのに適していますが、通常印刷物とマッチングさせる場合には環境光とモニタ白色点を統一して作業するのでそもそも必要ないです。
 また、代表的なsRGBやAdobe RGBといったICCプロファイルは、もとより状況に応じて白色点をシフトさせながら使うことを前提としています。例えばOSに標準で付属するsRGBとAdobe RGBの白色点は6600K。当然作成したファイルに埋め込まれるプロファイルの白色点も6600Kとなります。仮に絶対的色域変換を行うと、見る側のモニタが6500Kであっても5000Kであっても誤差が生じてしまいます。
Tags: cms
 Windowsのカラーマネジメントはソフトウェア単位で行う必要があると前回話しました。では、どれが対応していてどれは未対応なのか見ていきましょう。

未対応ソフトウェア
 殆どのソフトはこれです。サードパーティーは言うに及ばず、OS標準のエクスプローラやWMP、壁紙(デスクトップ)なども対応していません。基本的にWindowsのソフトはカラーマネジメントに対応していないものだと思ってください。

WCS対応ソフトウェア
 なんちゃってカラーマネジメント対応とでも言うべきでしょうか。IE9やWindows フォト ビューアー、Officeファミリーや確かWindows版Safariもこれだった気がします。
 どう中途半端なのかというと、ソースのプロファイルは正しく読み込んでくれます。開いた画像がsRGBなのかAdobe RGBなのかちゃんと認識しているということです。ところが、それをディスプレイプロファイルに変換してくれれば完璧なのですが、WCS対応ソフトウェアは全てsRGBに変換してしまいます。なので、ディスプレイプロファイルがsRGBと完全一致しない限り無意味なシステムです。

カラーマネジメント対応ソフトウェア
 最後は正しい色を表示するソフトです。残念ながらこれが一番数的に少ないと思います。一般的にAdobeのCS群に代表されるプロユースのクリエイティブツールはこれです、というか対応していないと仕事になりません。

 さて、殆どのソフトはカラーマネジメントに対応していないことがわかったところで、日常的に使用頻度が高いであろうカラーマネジメント対応ソフトウェアを何点か紹介します。

Firefox
 恐らくWindowsで唯一ちゃんとカラーマネジメントに対応しているブラウザです。about:configでコンフィグを開くとカラーマネジメントに関するオプションを設定でき、バージョン11では項目が4つあります。
  • "gfx.color_management.display_profile"
  • 出力に使うディスプレイのプロファイルを指定できます。空欄にすることでFirefoxのいるディスプレイのプロファイルを自動的に読み込むので通常は空欄のままにします。
  • "gfx.color_management.enablev4"
  • ICCv4に対応させるかどうかです。デメリットはないのでtrueにします。
  • "gfx.color_management.mode"
  • カラーマネジメントの有効範囲を設定します。0=無効、1=有効、2=条件付き有効。2にするとプロファイルの埋め込まれた画像のみ色変換を行い、1だとプロファイルの埋め込まれていない画像はsRGBとして色変換を行います。"プロファイル無し = sRGB"は暗黙の了解なので1にします。
  • "gfx.color_management.rendering_intent"
  • レンダリングインテントを指定します。0=Perceptual(知覚的)、1=Relative Colorimetric(相対的)、2=Saturation(彩度)、3=Absolute Colorimetric(絶対的)。インテントについてはまた改めて説明しますが、通常は1にします。
 ただし、ブラウザの場合には一つ注意点があり、本体がカラーマネジメントに対応していてもプラグインが対応しているとは限らないということです。例えば、Flash PlayerはFirefoxで使っても色変換されません。

ifcms.spi
 Susieプラグインです。Susie準拠の画像ビューアをカラーマネジメント対応にしてくれます。全てのソフトで動作するわけではありませんが、とりあえず試してみる価値はあります。

Media Player Classic Home Cinema
 ブラウザ、静止画と来たら最後に動画です。筆者の知る中では唯一カラーマネジメントに対応したプレイヤーです。ただし、設定しないと有効になりません。
 オプションで出力を"EVR カスタムプレゼンタ"に指定します。その後ウィンドウを右クリック→レンダラ設定→カラーマネジメントから"有効"にチェックを入れます。最後に、入力タイプをHDTV、アンビエント ライトをガンマ2.2、色空間変換の方法を相対的、にそれぞれ設定します。
 本当はソースに合わせて細かく設定するべきなのですが、動画の色環境は現在混沌としていて判断に困るケース多数です。その中で最も汎用性が高く、なおかつ仮に間違っていても影響の少ない設定が上記となります。
Tags: cms