キャリブレーションが正しく完了すればそのモニタに応じたプロファイルが作成されます。そのまま適用して終了、でもまあ構わないのですが、折角なのでプロファイルを読み解いてモニタがどんな性能か見てみましょう。
 トーンレスポンスはガンマ2.2に指定して作ってあるので当然それに近似するように調整されています。見るべきは残りのLUT補正値と色域です。

LUT補正値(Calibration curves)
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 こちらは筆者のU2711のLUT補正値です。LUTとはつまり入力信号に対して出力をどうするかを記録してあるデータです。画像を見ると全体的にたわんでいますね。すなわち全域通して要求された入力よりも出力を弱めているということです。ここからわかることは以下の通りです。
  • U2711は全域通して発色が派手
  • 特に中間域で誤差が大きい
  • 青、緑、赤の順番に発色が強い
 一応U2711の名誉のために補足しておくと、綺麗な直線になっていないのは製品が新品ではないからです。経年劣化によってモニタのガンマに誤差が生じるのは一般的なことで、であるからこそキャリブレーションが必要とも言えます。

色域(Gamut)
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 色域はその名の通りモニタが表示できる色の範囲です。何となく広ければ広いほど良いように思ってしまいがちですが、正しくは使用環境に近ければ近いほど理想的です。通常はsRGBで使うのでsRGBになるべく近い方がいいということです。
 dispcalGUIはデフォルトでモニタの色域とsRGBとを比較する表示になっています。カラーがモニタ、内側に見える点線がsRGBです。周りの実線は気にしないでください。U2711は広色域モニタなのでご覧の通りsRGBより遥かに広い色域を持っています。AdobeRGBで使ってこそのモニタだということがわかります。
 もちろん、色空間は三次元的なのでこのような二次元の表示だけで十分に評価することはできません。それでも、大雑把な指標としてモニタの色域を判断する良い材料にはなってくれます。
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 dispcalGUIは豊富な設定項目を持っています。その中でユーザーが積極的に意識するものは白色点、白輝度、黒輝度、ガンマの4つとなります。

白色点(Whitepoint)
 白色点は全ての基準となる白の発色を決定します。よく使われる光源に5000Kと6500Kがありますが、5000Kはもっぱら印刷物とのマッチング向きなのでモニタ単体の調整には6500Kを使います。
 理論上は自然光である太陽光に合わせるべきであり、5500K程度が理想的に思えますが、照明の世界ではCIE(国際照明委員会)が定めたD65(6504K)が標準光源と定められているので通常は6500Kに設定します。事実、PC向けのコンテンツは基本的には6500Kで作られています。また、屋外ならともかく、屋内で使われる照明はそのほとんどが6000K以上なので室内利用の多いPCには6500Kが向いています。
 ちなみに、5000KはISO(国際標準化機構)が定めたものです。印刷物をモニタ上で再現する国際規格の中では白色点が5000Kと決められています。ただし、印刷物とのマッチングには厳密なカラーマネジメントが要求され、少なくともAAA管を使って環境光を整えた状態にする必要があります。一般的な環境でとりあえずディスプレイだけ5000Kに設定しても大した効果は望めません。

白輝度(White level)
 白輝度という単語は聞き慣れないかもしれませんが、単なる輝度や俗にいう明るさと同義です。通常~カンデラ(cd)と表現しますが、厳密にはカンデラ毎平方メートル(cd/m^2)を単位に使います。
 具体的にどれぐらいの輝度に設定するかは環境によります。室内の場合、筆者の経験上120cdが最も見やすいです。適正輝度が分からないうちはとりあえず120cdでしばらく使ってみて、眩しかったら10cd下げる、見づらかったら10cd上げて調整するのがいいかと思います。ただし、ISOでは適正が最低80cd、最大160cdと定められているのでこの範囲内に収めるのが無難でしょう。また、光沢液晶は映り込みが発生するので非光沢に比べて適正輝度が高くなりがちです。
 屋外の場合は、環境光が非常に強いのでとても細かい数値を気にしていられません。とりあえず見やすい明るさまで上げましょう。もっとも、屋外で使うときは正しい色以前に文字が読めるかどうかが問題になるので発色は二の次です。
 ところで、とりあえず適正輝度を120cdとしてみると、市販のモニタがいかに明るいかよくわかるかと思います。筆者の手持ちを例にとると、CCFLバックライトのU2711は標準輝度350cd、LEDバックライトのU2212HMは標準輝度250cdです。最大値ではないので全開にするともっと明るいのでしょう。これを120cdに調整すると、U2711は輝度出荷時50→26、U2212HMは輝度出荷時75→58とそれぞれ下げて使っています。もちろん、輝度だけでなくRGBゲインもいじっているので単純比較はできませんが、少なくともかなり輝度を下げて使っていることは確かです。

黒輝度(Black level)
 黒輝度はもしかすると白輝度以上になじみが薄い単語かもしれません。というのも、通常はスペックシートに載らないからです。黒輝度はその名の通り黒い画面を表示したときの輝度です。白輝度が最大光量であるのに対し、黒輝度は最少光量を表しています。
 白輝度には適正値がありますが、黒輝度は基本的に低ければ低いほど良いです。なのでキャリブレーション時は特に指定せずネイティブをとらせるのが一般的です。本来黒色というのは光っていない状態なので黒輝度が低いほど本物の黒に近くなるわけです。
 ところで、黒輝度を気にするのは液晶ならではとも言えます。液晶はパネルの裏からバックライトを当てて動作しますが、黒というのはバックライトの光を全て遮る、いわば液晶が一番苦手とする状態です。高品質なパネルであってもバックライトの光を全く通さないというのは不可能であり、製品ごとに固有の黒輝度を持ちます。これが例えばプラズマディスプレイの場合、放電によって発光する仕組みなので発光しなければ黒になります。この時の黒輝度はゼロに限りなく近いので黒輝度が話題になることはありません。
 ちなみに、大雑把にであればスペックシートから黒輝度を求めることができます。大抵コントラスト比は公開されているからです。"コントラスト比 = 白輝度 / 黒輝度"なので例えば標準輝度350cd/m^2、標準コントラスト比1000:1であれば標準状態での黒輝度は0.35cd/m^2だとわかります。

ガンマ(Tone curve)
 正しくはトーンカーブと表現するべきでしょうが、一般的にガンマを使います。原理的な話は少し面倒なので省きますが、これはガンマ2.2に設定します。今のPCはガンマ2.2を基準にしているからです。以前はWindowsが2.2、Macが1.8という時代もありましたが、OS X以降はMacも2.2を採用するので迷わず2.2に設定して下さい。
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 dispcalGUIを推すついでに、メーカー純正ソフトウェアが意外とダメだという話をしたいと思います。何かと言うと不具合についてです。もちろん不具合のないソフトが殆どでしょうし、あったとしても特定の環境下でのみ発現する場合が多いでしょう。ただ、筆者はどうにもキャリブレータの不具合に当たりやすいようなので紹介したいと思います。

Spyder2
 まずは旧ColorVision社から。その後買収されてSpyder3以降はDatacolor社から出ているので最近のは改善されているとは思いますが、Spyder2の付属ソフトは結構雑でした。
 買ってきたら最初にソフトをインストールするわけですが、日本語を選択すると文章が文字化けします。何かしらランタイムを必要とするのでしょう。ただ、それならばインストーラーに付属させるのが当然だと思うのですが一切ありません。しかも、ネットから入手した最新のアップデータでインストールしても文字化けするので全く修正されていません。まあ、インストールは次へを連打すればいいだけなので実用上問題ないのが救いです。
 二つ目はいちいち出る謎のエラーメッセージです。残念ながらもうソフトを入れてないのでスクリーンショットは撮りませんでしたが、プロファイル作成時はもとより、ProfileChooserでプロファイルを切り替える時にも謎のエラーメッセージがぽんぽん出てきます。XPからVistaを経て7でも使いましたがOSに限らず出続けています。こちらもアップデートしても変わりません。幸いにもエラーメッセージが出ようとも問題なく操作できますし、測定結果も問題ないようなので実害は無さそうですが、精神衛生上非常によろしくないことは言うまでもありません。

ColorMunki Photo
 お次はX-Riteの現行製品。問題の程度で言えばこちらの方が遥かに深刻です。ちなみに、筆者の環境は64bit版Windows7にソフトは最新のバージョン1.1.1です。とりあえずこれを見てください。
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 どちらもデスクトップで使っているモニタを純正ソフトでキャリブレートして作成したプロファイルです。左がプライマリ、右がセカンダリですがどちらもダメでした。何が問題なのかというと、二つのプロファイルとも白色点6500Kに指定して作成したということです。しかし結果は両方とも白色点が5000Kになってしまいました。
 なお、バージョン1.1.1ではターゲットを、固有の白色点(ネイティブ)、D50(5000K)、D55(5500K)、D65(6500)の中から選べるのですが、どれを選んでもプロファイルの白色点が5000Kになります。これはもう致命的と言っていい不具合だと思うのですが、バージョン1.1.1がリリースされたのが2009でそれ以降修正版は出ていません。ちなみに、Macでも試しましたがやはり白色点が5000にされてしまいます。

 ということで、純正ソフトの不具合紹介でした。Spyder2はともかく、ColorMunki Photoは現在のソフトでは使い物になりません。これらに比べるとdispcalGUIの挙動は本当に安定していて、できたプロファイルにも問題は見受けられません。オープンソースとは言え非常に信頼性の高いソフトウェアと言えます。
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