色合わせに関してはたぶんこれが最終回です。最後はついつい忘れがちなレンダリングインテントの話です。
 カラーマネジメントでは入力と出力の色域が異なる場合、正しい表示になるようにソースの色を変換するわけですが、この時の変換方式がレンダリングインテントです。4つのインテントが存在し、状況に応じて使い分けることになります。

Peceptual(知覚的)
 ソースの色域がモニタの色域よりも広い場合に明度、つまりは明るさを保ちながらソースの色を圧縮する方式です。当然もとよりも狭い色域に押し込められるので彩度は犠牲になりますが、諧調性の破たんが起こりにくいという利点を持っています。
 写真など綺麗なグラデーションが求められる場合で有効です。主に印刷物とのマッチング目的で用いられるのでディスプレイだけの色合わせではあまり使われません。

Satulation(彩度)
 ソースの色域がモニタの色域よりも広い場合に今度は彩度、つまりは鮮やかさを保ちながらソースの色を圧縮する方式です。こちらでは明度が犠牲になりますが、鮮やかな仕上がりとなります。
 図や表といった見やすさが求められる場面で有効です。こちらもやはり印刷物とのマッチング目的で用いられるのでディスプレイだけの色合わせではあまり使われません。

Relative Colorimetric(相対的)
 まずソースとモニタの白色点が違う場合に、ソースの白色点がモニタに合うように調整されます。その上で、ソースの色域がモニタの色域よりも広い場合には色域外の色がカットされ、最も近い色に置き換わります。明度も彩度も犠牲となりますが、色域内の正確性は保証されます。
 直感的でわかりやすい方式で、正確な色を見るには最も有効です。通常はこの方式を使います。

Absolute Colorimetric(絶対的)
 相対的とあまり変わらないのですが、白色点の変換を行いません。そのため白も着色されます。最も正確そうに思える方式ですが、実は最も使用頻度が低いです。モニタ上で印刷物をエミュレートするのに適していますが、通常印刷物とマッチングさせる場合には環境光とモニタ白色点を統一して作業するのでそもそも必要ないです。
 また、代表的なsRGBやAdobe RGBといったICCプロファイルは、もとより状況に応じて白色点をシフトさせながら使うことを前提としています。例えばOSに標準で付属するsRGBとAdobe RGBの白色点は6600K。当然作成したファイルに埋め込まれるプロファイルの白色点も6600Kとなります。仮に絶対的色域変換を行うと、見る側のモニタが6500Kであっても5000Kであっても誤差が生じてしまいます。
Tags: cms
 Windowsのカラーマネジメントはソフトウェア単位で行う必要があると前回話しました。では、どれが対応していてどれは未対応なのか見ていきましょう。

未対応ソフトウェア
 殆どのソフトはこれです。サードパーティーは言うに及ばず、OS標準のエクスプローラやWMP、壁紙(デスクトップ)なども対応していません。基本的にWindowsのソフトはカラーマネジメントに対応していないものだと思ってください。

WCS対応ソフトウェア
 なんちゃってカラーマネジメント対応とでも言うべきでしょうか。IE9やWindows フォト ビューアー、Officeファミリーや確かWindows版Safariもこれだった気がします。
 どう中途半端なのかというと、ソースのプロファイルは正しく読み込んでくれます。開いた画像がsRGBなのかAdobe RGBなのかちゃんと認識しているということです。ところが、それをディスプレイプロファイルに変換してくれれば完璧なのですが、WCS対応ソフトウェアは全てsRGBに変換してしまいます。なので、ディスプレイプロファイルがsRGBと完全一致しない限り無意味なシステムです。

カラーマネジメント対応ソフトウェア
 最後は正しい色を表示するソフトです。残念ながらこれが一番数的に少ないと思います。一般的にAdobeのCS群に代表されるプロユースのクリエイティブツールはこれです、というか対応していないと仕事になりません。

 さて、殆どのソフトはカラーマネジメントに対応していないことがわかったところで、日常的に使用頻度が高いであろうカラーマネジメント対応ソフトウェアを何点か紹介します。

Firefox
 恐らくWindowsで唯一ちゃんとカラーマネジメントに対応しているブラウザです。about:configでコンフィグを開くとカラーマネジメントに関するオプションを設定でき、バージョン11では項目が4つあります。
  • "gfx.color_management.display_profile"
  • 出力に使うディスプレイのプロファイルを指定できます。空欄にすることでFirefoxのいるディスプレイのプロファイルを自動的に読み込むので通常は空欄のままにします。
  • "gfx.color_management.enablev4"
  • ICCv4に対応させるかどうかです。デメリットはないのでtrueにします。
  • "gfx.color_management.mode"
  • カラーマネジメントの有効範囲を設定します。0=無効、1=有効、2=条件付き有効。2にするとプロファイルの埋め込まれた画像のみ色変換を行い、1だとプロファイルの埋め込まれていない画像はsRGBとして色変換を行います。"プロファイル無し = sRGB"は暗黙の了解なので1にします。
  • "gfx.color_management.rendering_intent"
  • レンダリングインテントを指定します。0=Perceptual(知覚的)、1=Relative Colorimetric(相対的)、2=Saturation(彩度)、3=Absolute Colorimetric(絶対的)。インテントについてはまた改めて説明しますが、通常は1にします。
 ただし、ブラウザの場合には一つ注意点があり、本体がカラーマネジメントに対応していてもプラグインが対応しているとは限らないということです。例えば、Flash PlayerはFirefoxで使っても色変換されません。

ifcms.spi
 Susieプラグインです。Susie準拠の画像ビューアをカラーマネジメント対応にしてくれます。全てのソフトで動作するわけではありませんが、とりあえず試してみる価値はあります。

Media Player Classic Home Cinema
 ブラウザ、静止画と来たら最後に動画です。筆者の知る中では唯一カラーマネジメントに対応したプレイヤーです。ただし、設定しないと有効になりません。
 オプションで出力を"EVR カスタムプレゼンタ"に指定します。その後ウィンドウを右クリック→レンダラ設定→カラーマネジメントから"有効"にチェックを入れます。最後に、入力タイプをHDTV、アンビエント ライトをガンマ2.2、色空間変換の方法を相対的、にそれぞれ設定します。
 本当はソースに合わせて細かく設定するべきなのですが、動画の色環境は現在混沌としていて判断に困るケース多数です。その中で最も汎用性が高く、なおかつ仮に間違っていても影響の少ない設定が上記となります。
Tags: cms
 作成したプロファイルを適用した時点で白色点とガンマは適正値に調整されます。インテル内蔵GPUを使っているとプロファイルロード後にインテルドライバがLUTを上書きすることがあるので、その場合はスタートメニューに入っている"dispcalGUI Profile Loader"で再度読み込んでください。ReGamma等の外部ソフトウェアでもリロードは可能なので、スタートアップに登録して起動時のロード順を調整したり、他のソフトと組み合わせてLUTを上書きしてくるソフトの後に自動的に再読み込みするように設定できます。

 さて、プロファイルを読み込んだだけではカラーマネジメントはまだ不十分です。というのも、LUTを補正しただけでは色域をマッチングさせていないからです。
 通常のアプリケーションは全てsRGBを想定しています。もしディスプレイの色域がsRGBと完全に一致するのであれば白色点とガンマが適切なら他に補正は必要ありません。ところが、仮にディスプレイの色域がsRGBより広い場合、sRGBの画像をそのまま表示すると本来の色よりも派手な色で出力されてしまいます。これでは困るので出力が正しい色になるように元の画像を少し地味にする作業が必要になります。
 一般的にソフトがカラーマネジメントに対応しているとかいないとかは、そのソフトがこの色変換の工程を行うかどうかで判断されます。そして、Windowsがカラーマネジメントに弱いと言われるのもこの部分に他なりません。

 最初にカラーマネジメントが優秀なMacの話をしましょう。Macには古くからColorSyncというカラーマネジメントシステムがOSレベルで搭載されています。このColorSyncは非常に強力で、OS上のUIを含めた全てのアプリケーションのカラープロファイルを管理し、適切にディスプレイプロファイルに変換してからVGAに出力を渡します。このため、設定が適切であればディスプレイに映る色は常に正しいことが保障されます。
 これに対して、WindowsはOSレベルでのカラーマネジメント機能はありません。VistaでColorSyncに匹敵するWCS(Windows Color System)を導入するはずだったのですが、諸事情により中半端な形での実装にとどまっています。そのため、カラーマネジメントはソフトウェア単位で管理します。

 ということで、Macであればディスプレイプロファイルを適用した時点でカラーマネジメントは終了です。しかし、Windowsではそうはいきません。カラーマネジメント対応ソフトウェアを使わないと正しい色は表示されないのです。次回、具体的なソフトの話をしたいと思います。
Tags: cms